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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

奉行の右衛門尉経雅は、

「――会いたいと」

「そう申しまする」

「引っ搦めて、白洲へ曳け」夜半をすぎていたが、松明の火は、諸方に焚かれ、そこばかりが赤く明るかった。

安楽房は、縄目をうけ、白洲に坐ると、すべてを隠さなかった。ありのままにいった。そして、

「師上人は元よりのこと、その他の同門信徒たちには、なにも知らない儀であります。この身は、いかような極刑に処せられましょうとも、決して、お恨みはいたしませぬが、あわれ、御仁恕をもって、念仏門閉止のお罰は、ひとえにお寛大を賜わりますよう、わけても師の上人は、ここ年来、病弱、且つ、専念御行状をも慎まれている折でもありまするし」

血を吐かないばかりに、彼の声は、慚愧と哀涙と熱烈な真心をつくして縋るのであった。――だが経雅は、彼のいうところなどは聞こうともしないのである。

「汝と共に、鹿ヶ谷におったはずの住蓮は、いずこへ潜伏したか」と、追求し、また、

「松虫の局と、鈴虫の局のお二人は、何地へ落とした。それをいえ」安楽房が、それについては、一言も吐かないので、経雅は、

「こいつ、自分の勝手なことには、饒舌を恣にし、奉行の糺問には唖を装っておる。