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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

四

(――それだな)とは早くも察していたのであるが、わざと、何もしらない顔をして、

「十三日……」考えこんでいた。蔵人は、膝をすすめて、

「ぜひ、お繰りあわせをつけて欲しいが」

「して、当日の集りに見えらるる方々は」

「されば」と、右衛門尉は、懐をさぐって、燭の下に、連名の一巻をひろげながら、

「――近江中将蓮浄どの、法勝寺の執行俊寛僧都、山城守基兼どの、式部大輔正綱どの、平判官康頼どの、また、新判官資行どのを始めとして、かく申す右衛門尉、ならびに、蔵人行綱」と、読んだ。

四

院の文官と、北面の武士と、ものものしく連判してあるのである。

範綱は、眼をそらした。そして蔵人の眼をみると、蔵人は、じっと自分の眼を見つめて、こう秘密をうちあけた以上は、是が非でも加盟させずにはおかない、拒めば即座に左の手によせている太刀にものいわせても――という殺気のある眸をかがやかしていた。

「なるほど」範綱は、すこし後へ退がった。そのあいだに、彼は思案を決めていた。

「――では僧都の庵にあつまると申しても、歌、猿楽などいたして、半日を、風雅に遊ぼうというわけでもないですな」

「もとより、表面は――そういう態にしてあるが、まことは……」