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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
なにをつつみましょう、私は七名の側女を置いておりました。それを皆、あの火災の翌る日、それぞれの国元親もとへ帰しました。また、山吹も仰せのように計らいました。妻へは両手をついて、過去を詫び、この後も誓いあいました。わが子たちへも、多年の父らしからぬ行いを謝しました。領民には、来る年より、年貢を下げるつもりでおりまする。側女の衣装や身のぜいたくに費やす金をもって、召使の功を賞し、貧しい民をうるおしたいと思い出しました。――だが、まだ私の心は、それだけでは慰みません。――上人、どうしたら過去の償いができましょうか。それを教えていただきたいのです」
三
親鸞は黙然と眼をふさいで聞いていた。初めのうれしげな面のかがやきが次第に沈黙に変ってゆく――。明らかに年景のことばが何か胸を重くふさいできたのである。
「ようわかりました」こういうと、またしばらく黙っていた。年景は、悔悟の涙の中に顔をしずめたままであった。
「おん身が、そうした心に責められているらしいことは、あの火災の後よそながら愚禿もながめておった。――したが、その悔いに責められるのあまり、善根にいそぐお心はうれしゅうござらぬ。