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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

「その気持はわかるよ。わしなどは、若い時代を、木曾殿の軍に加担して、ぞんぶんに合戦の中で果してしまったが……」

「僧の生活には、気を吐くとか、腕力を出すとか、汗をながすとかいう生活はありませんから、常人の若い者より、よけいになにか、こう体のうちに鬱屈している元気とでもいうようなものが、血の底に溜って、それがひどくなると、暗鬱にさえなってくるのじゃないかと思います」

「ひとつ、そんな時には、うんとこさと、暴れるんだな」

「暴れるったって、どういうことをしていいか分りませんし」

「なんでもいいから、汗と鬱気を出してしまうんだ。……そうだ」と、後ろを仰いだ。里の者が粘土でも採った跡であろう、崖の中腹から上へ真っすぐに二丈ばかり山肌が削ぎ取られてあった。

西仏は指さして、

「あの上まで登って行っては下へ飛び降りるんだな。それを何十遍でもくりかえしてやる。――登るのは行心、飛び降りるのは破心、闘いの生活だと思って、倒れるまでやってごらん。若い暗鬱なんてものは、汗の塩になってしまう」

「なるほど」石念は、よほど深刻に考えていることとみえて、真面目になってそれを実行する気らしく、立ち上がった。