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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
治承、寿永という風雲乱世は、つい昨日のようであったが、今はもう鎌倉幕府という言葉さえ、民衆には新しいひびきが失くなっている。鎌倉幕府自体にさえ、種々な弊政やら、葛藤やら、同族の相剋やら、醜いものの発生が醸し出されて、そろそろ自壊作用の芽をふきだしていた。
その源氏が、隆々と興って、治承、寿永の世にわたって、平家を剿滅して行ったころには、源平両軍が戟を交えるところに、佐々木三郎盛綱の名が功名帳に輝かないところはなかった。
――だが、そうした武運のめでたい男も、鳥坂城に城資盛を討った老後の一戦から、ふッつりと、明けても暮れても血の中の武士生活に無常を感じて、
(何がゆえに?)と大きな悩みと迷いを生じ、子のある親を討ち、親のある子を討って、それを兜の八幡座のかがやきと誇る武者のこころが忌わしくなり、武具馬具打物などのすべてのそうした血なまぐさい物に囲まれている日常が、耐えられない苦痛になっていた。
三
武者の生涯ほど、一刻一刻が、真剣で血まみれなものはない。
五十余年は夢の間だった。なんであんな血なまぐさい生涯を、獣のように働いてきたか。――人を斬っておのれが生きる道としてきたか。