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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

郷民の評判とても、勿論よくないし」

「そう人間の瑕ばかり数え立てたら、誰にせよ、限りがない」

「父上とは、ご気性が合いましょう。才人には才人ですから」

「では、そちもこの縁組には、同意でないのか」

「私より父上よりも、肝腎な当人が、嫁ぐ心になりますまい」

「どうして政子の胸を、そちはそのように云い断れるのか」

「では――義母上からも云い難いでしょうし、政子に云わせるのも酷い気がしますから、私から、何もかも申し上げて、同時に、私の意見も聞いていただきましょう。――実はその」

と、宗時が、改まると、時政の顔いろは、蔽いようもない困惑にもう曇っていた。――山木判官に与えた約束を、今さら反故にしようもないからである。

「待て待て、宗時」

あわてて彼は顔をふった。われながら頑迷には思われたが、時政は、厳父の威を、振りかざさずにいられなかった。

「断っておくが、このたびの縁組は、いつものはなしとは違う。時政が眼鏡をもって、山木判官兼隆ならば、多少、瑕があろうが、家門の為にも、また、政子の行末にもよかろうと、婚儀の日まで年内にと、すでに内々の支度も運んでいる事なのだ。――今さら、破談とはわしとして云えぬ。