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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
四
椙山の深くまで辿りつくと実平は、戦の帰結に見きりをつけて、こう提議した。
「さて、この大勢では、どこへ隠れ忍ぶにも、すぐ敵の目に見出される惧れがある。これまで、お側を離れずに、尾き従うて参られた各※(二の字点、1-2-22)のご忠節は、涙ぐましゅう存ずるが、これでお別れしたほうが、かえって殿の御為であるまいか」
「…………」
誰も、答える者はなかった。誰の面も、惨として、上がらなかった。敗戦の無念を唇に噛んでじっと、熱涙をこらえていた。
ともすれば、嗚咽と変りそうな慄き声を、実平は強いて、励ましながら、言葉をつづけた。
「今のお別れが、誓って、後日の倖せとなるように、ここは、一先ず袂を別とうではないか。――殿お一人の身ならば、この実平が、たとい一月ふた月の間は、どのように致しても、きっとお匿い申してみせる。――やがて、計を立て直して、会稽の恥をそそぐ日まで」
誰か、手放しで泣く者があった。一瞬、みな肱を横にして顔へ当てた。
頼朝は泣きたいよりは、自分の不徳を詫びたかった。この惨敗の責任がみな自分にあるものと責められていた。
だが、こうなっても、
(これ限りではない!)