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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

七

「……なにか?」

と、すでに兄弟は馬上にある。

「失礼ですが、もしやあなた方は、九郎義経様について、奥州より下られた方達ではございませぬか」

「なに。……どうして、左様な事がわかるか」

「てまえも奥州ですから。……おはなしの様子で」

「そういえば、そちも奥州ことば。――奥州はどこだ」

「栗原郷でござりまする。多くは平泉の国府に住んでおりますが」

「ふうむ。……この鎌倉へ商いにでも参っておるか」

「お察しのとおりです」

「名は?」

「ちと、ここでは憚ります。お供をいたしてもさしつかえございますまいか」

「どこまで」

と、兄弟は顔を見あわせて、やや迷惑そうに云う。

「いえ、そこらの、人なき所までで」

「駈けるぞ」

「結構です」

「行こう、兄者人」

駒をならべて、兄弟は炎天へ馳け出した。畦の豆の葉に白い埃が舞う。――吉次は、媼に代を与えて後から走った。

馬上と馬上とで、兄弟は何か談合しているふうだったが、吉次を撒いてしまうつもりでもないらしい。やがて、雪之下をすぎ、八幡の下まで来ると、駒を下りて、杉並木の陰に待っていた。

「さき程は、失礼いたしました。実は、てまえは金売吉次と申す者で」