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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

箱根、足柄と、各※(二の字点、1-2-22)郎党や駒をひきつれて西へ急ぐ他の部隊をながめても、磨墨ほどな逸物は見あたらない。

景季は、途中、駿河の浮島ヶ原に、軍勢を休めて、磨墨に草を飼いながら、自分も草に脚を投げていた。

――すると彼方の道を、何者の部下か、三、四人して、生※(「口+妾」、第4水準2-4-1)を曳いて通ってゆく。自分の眼のせいではないかと、ぬっくと起ち上がって、

「……はてな?」

眸をこらして見たが、どう見ても紛れのない、名馬生※(「口+妾」、第4水準2-4-1)にちがいなかった。

三

何か、景季からいいつかって、駈け出して行った郎党は、彼方の道を、生を曳いて通ってゆく者をつかまえて、訊きただしていたが、程なく、景季の前へ、駈け戻って来た。

「やはり生※(「口+妾」、第4水準2-4-1)であろうが」

「左様でした」

「して、誰の部下だ、あの者たちは」

「佐々木家の御家人と承りました」

「佐々木……佐々木の誰」

「高綱どので」

「馬も高綱のものか」

「鎌倉殿から拝領なされたとかで、この毛艶はどうじゃ、馬品の美しさよ、などと舎人どもまで誇らしげに自慢しておりました」