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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

、第4水準2-4-1)は、水をきらって、どうしても河へはいらないのである。

景季の磨墨は、駈け足をもったまま無造作に浅瀬を蹴だててもうざんぶと平首のあたりまで流れに沈んでいた。

「しめた」

景季は、巧みに、水馬の技術をこらして、楽々と馬を泳がせながら、後ろの岸をふりかえった。

高綱はまだ、焦れ狂う生※(「口+妾」、第4水準2-4-1)の鞍上に、歯がみをしながら手綱をさまざまつかいわけていた。

四

強く、一鞭加えると、生※(「口+妾」、第4水準2-4-1)は勢いよく水へ向って駈けこみ、高綱は、真っ白に飛沫をかぶった。

――が、すでに景季の磨墨は、数十間先をとって、あざやかに泳ぎ渡ってゆく。

「不覚。おくれては」

と、高綱はあせった。

「あれほど、広言吐いて、ご愛馬を賜わっておきながら、先陣は景季に取られたりと聞えては、一代の名折れ」

と、恥を思った。

兜の眉庇を俯向けて、高綱は必死の唇をむすんでいた。

河波は、横ざまに搏ってくる。岸を離れるほど流れは激してくる。怖ろしいのは、渦まくそれよりも、寸断された障碍の縄が、なお藻のように浮游しているので、それが馬の四肢に搦みつくことであった。