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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

「われわれの力でなければ、時勢はうごかないのだ」

という自信を新たにした。武家自体の力というものを知って来たのである。

こんどの平治の乱を境としてである。あの戦火の中、主上、上皇の車駕が共にこの六波羅へご避難あった事なども、いやが上に、

「前例もない誉れだ」

と、六波羅武士の誇りを昂めたものであった。

源氏といい、平氏といい、今日までは、公卿の下風について、公卿の爪牙につかわれていたに過ぎないが、時代はだんだん変ってきたぞ。――眼に見えずいつとはなく、そうでなくなった武家同士を、お互いの身振りや眼いろにも、自負に満ちて、見合うようになって来たこの平治二年であった。――いや改元して、この正月からは、永暦元年ということに、年号まで革まった。

その上、同じ弓取の源氏という一派の勢力までが、去年の年暮を限りに一掃されてしまったのである。

だから武門といえば、地方の辺鄙は知らぬこと、都に於いては、平氏のことだ。

平家の初春!

そう云ってもいいこの正月だったのである。

その隆運の気は、この六波羅の地相にも、まるで、絵屏風を展げたように漲っていた。わずか、十年も前までは、清盛の父の刑部卿忠盛が住んでいた土塀まわり小一町しかの古邸が、六条の河原へ向って、寒々とあったに過ぎなかったのが――今はどうして平氏の眷族たちも皆、近く