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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

高い足なみに合う音楽を欲した。地味よりも派手を求めた。

だが。

派手も明るさも、平家の人々が纏った浮薄とはちがう。繊弱ではない。いたずらに贅でもない。

剛健な明るさである。われこそ奉公の道にかけては人に負れじとする派手。――しかも無駄なく、毅然と、清潔を主とした姿をもった、焼跡の新しい町を行く武士を見ると、

(鎌倉風よ)

と、人々はささやいた。

多くは義経の部下だった。その人々から一つの風が興ったともいえる。いつか庶民の風俗もそれに倣う。たちまち、風は風を興して新しい世粧となった。

「ここだな、弟」

「むむ。この寺」

六条坊門から北山のほうへ曲がって、もう農家しか見えない辺りに、一叢の木立と山門が見える。

佐藤兄弟は、そこを通って、寺僧へ何かいうと、僧は顔見知りと見え、すぐ二人を案内して奥の客室へ導いた。

「おう、これは」

腹這いになって、頬杖つきながら、蟻を眺めていた退屈そうな男がいた。あわてて起き直って礼儀をする。

「どうなさいました。おふたり共、いつになくお元気がないが」

寺の食客は、奥州の吉次であった。白拍子の家で幾月もこうしていた彼の都ぐらしも一時代前となった。