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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
洛中大火の時、翠蛾、潮音の家も焼けて、どうしたか、あの姉妹の消息もそれきり知れなかった。
「いや吉次。実は、こう両名とも、ご主君からご勘当をうけてしまったのだ」
「ほ。お暇を出されましたか」
「奥州へ帰るがよいと、きついご不興をうけ、お詫びいたしたが、お聞入れもない。……で、悄々、そちに相談に来たわけだが」
「いけません」
吉次は、手を振った。
「この吉次も、一ノ谷でお別れしたきり、ずっと、お目にかからずにいるところです。難波の淀の口に、たくさんの船を借りあつめ、今か今かと、ご出軍を待っていたが、とうとうお沙汰なしで、えらい手違いをやってしもうた。……しかし、その私が、お目にかかりに参上したら、お辛いに相違ない。……手前もまた、あの君の、ご無念なお顔を見てもしかたがない。そのうちには、風のふき廻しも変るだろう――そう気永に考えて、きょうも半日、蟻の争いを眺めていたところです。――せっかくですが、お取りなしの事なら、どなたか、余人にお頼みください。手前はまだ当分、源九郎様へお目通りしたくございません」
「そう出ばなを取られては」
と、継信と忠信は、当惑そうに顔を見あわせて、