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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

十三日は、その日であった。

「――今日は首斬られる日」

と、知っていた。

怖いようなまた、何でもないような――であった。

鶯の声が、今朝も耳につく。

と――

庭さきの陽の光の中を、その鶯の影が征矢みたいに翔けた。あわただしい跫音が長縁を走って来たので、驚いたものとみえる。

「……来たか?」

頼朝の顔が、蝋みたいに白くなった。さすがに眸も恟々しはじめていた。

「佐殿」

宗清であった。それへ見えるなり声を弾ませて云うのだった。

「お欣びなさい。今はまだ申されませんが、きょうは、やがて吉い事がございますぞ。――吉い事が」

それでもまだ遽には顫えも止まらず、何の意味か解せなかったが、やがて今に、これへ小松殿がお見えになられますぞ――と、宗清が、云い残して去ってから、やっと、

「ア。……ことによると?」

頼朝は覚って、急に、体をそこに置いていられないような気持になりだした。

恐くて恐くて、一刻もはやく、この檻を破ってでも逃げたくなったのは、それからの半日ほどの間だった。

午の刻の頃おい。

小松重盛が見えて、池の禅尼のおすがりと、清盛の慈悲とに依って、一命を救ってとらせるとの旨を、頼朝につたえると、頼朝は、嗚咽の声をあげて、幾たびも、