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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
浄土の小鳥
一
小栗の城主尚家もきていた。相馬、笠間などの大小名をはじめその家臣、郷士、町人、それを観る雑多な民衆――なにしろおびただしい人出である。この地方の文化が興ってから始めての盛観だという老人もある。
一光三尊の御分身は、伽藍の建築が完成するまで、先ず宮村の庵室へ、仮に安置することになった。
夜になると、田や畑の者が、それを礼拝したさと、ここの法話を聞こうとして、狭い庵室に入りきれないほど押しかけた。毎夜のように、草庵は、明々とかがやく灯と、そうした人々の膝でいっぱいに埋められた。
――秋も暮れてくる。野や田や、木々の葉は、蕭々と冬枯れを告げてくるが、宮村の草庵の灯は、いよいよ、常世の光明にみちていた。
年が明け、春が来る。さながらここは法の万華の咲きみだれた浄土曼陀羅であった。
「ありがとうござりまする」
「また、あした参りまする」
「どなた様も、御免なされませ」
「どれ、わしらも――」
その日の集まりは、たそがれに終って、昼間の法筵であったので、多くは野に出て働かない町方の女房だの、老人だの、病人や子どもたちであった。
みな、よろこびにあふれて、庵室からぞろぞろもどってゆくのである。