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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

十五

だが、その列の中にいた多田蔵人だけは、途中から闇にまぎれてただ一人どこかへ姿を消してしまった。

十五

法皇の行幸はなかったが、すでに、暮れる前から、鹿ヶ谷の俊寛の山荘には、新大納言以下、不平組の文官や武官が、おのおの、微行のすがたで集まっていた。

「六条の範綱めが、いらざるさしで口を――」と、人々は、空御輦をながめて口々に怒ったが、

「なに、法皇のお心変りは、時雨のようなもの、降ると思えば照る、照ると思えば降る――。明日にてもまた、麿が参内して御心を励ませば、必ず次の集まりには、御参会あるにちがいない」

大納言成親は、自信をもって、席の人々へいった。浄憲法師も、相槌を打って、

「よう喩えられた。まことに、法皇の御気色は、照り降り雨、われらが側近にあれば、また変る。お案じあるな」席には、近江入道蓮浄、山城守基兼、平判官康頼、その他の人々がいた。

主の俊寛は、折角すすみかけた平氏顛覆の相談が、法皇のおすがたの見えないために、やや出鼻の白けたような様子を見て、

「軍立てのことは、次の会に改めて謀るといたして、今宵は、盟約の酒もりとしよう。ご異議ないか」

「よかろう」