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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

二

これは、鳳凰の雛だ)そう思いながら、

「入門したいというのは、そこもとか」

「はい」すずやかな返辞である。

「お年は」

「八歳になりました」

「おん名は」

「十八公麿と申します」

「お父君は、武家か」

「いいえ」

「どなたで、何といわるる」

「六条源氏町の藤原範綱の子でございます」

「や、範綱うじの、御猶子か。……ウーム、道理で」

二

自分の眼が間違っていなかったことに、民部は、膝を打って、

「道理で――」と、何度も、うなずいた。

「六条どのは、和学、歌道の方では、当代での指折りである。その御猶子とあれば、なるほど、あらそえぬ」

「お父上か、叔父様が、共に参って、おねがい申すところですが、学問の徒になるには、自分で参って、ひとりで、おねがいするのが、ほんとだと教えられて、こうして、参りました」

「お気持が、ようわかる」

「先生、どうか、私を、今日から儒学のお弟子にしてくださいませ」

「お家庭にいるあいだは何を学んでおられたか」

「お父上から和歌を、また、叔父様から、書道や、やさしい和学を、教えていただきました」

「よろしい、明日から、お通いなさい。民部が、学び得たかぎりの学問を、おつたえいたしましょう」