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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

ただ、人の心だけが、残ります。心の業だけが残ります。ですから、生ける間に、よい事をしたものは、よい名をのこし、悪業をしたものは千載の後までも、悪の名をたましいに持って、死しての後は、それを拭き改めることもできません」

死を考えることは、生を考えることである。十八公麿の眼は、うっすらと、そのころから、実社会の相に、みひらいてきた。

路傍に、飢えて、菰をかぶっている人間のすがたにも、刀槍を晃めかせて、六波羅大路を練り歩く武将にも、新たな、観る眼があいて世の中を考えだした。

そして、こういう人々の種々な仮の相が、一様に、死の無に回って、そのたましいの名だけが、宇宙にのこる。

無限に死に、無限に生れ、無限のたましいの名だけが、不滅にある。

「ふしぎな? ……」と、彼は、つぶらな眼をじっとこらして、見ても見ても見飽かぬように、深碧な、そして深く澄んだ、空に見入っていることがあった。

そういう間も、日野民部の学舎に通うことは、日々怠らなかった。

四

孟子、老子、五経、論語と、十八公麿の学業が目ざましい進み方で上がってゆくのを見て、寿童丸を餓鬼大将にする学舎の悪童連は、