轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「なにか」
「おねがいがあります」
「ほ……。菓子でもほしいか」
「いいえ、ちがいます。――お師さまは、明日、叡山へおのぼりになると聞きました」
「うむ」
「私を、連れて行って下さい」慈円は、笑った。
「叡山を、知っているか」
「朝夕、ながめています」
「うららかな日は、慈母のように、やさしく見える。だが、あのお山のふところには、どんな苦行があるか、それを、おまえは知るまい」
「聞いています。修行は、苦しいものだと、皆さまが申します」
「でも、登る気か」
「一人では、ゆかれません、お師様のお供をしてなら、どんな、苦しいところへでも、従いてゆける気がします」
「もののふの戦よりも、もっと、辛いぞ」
「そういう、苦難とやらに、この身をためしてみたいのです」
「それほどに、決心してか」
「はい」ぱちりと、範宴は、眼をみはっていった。
じっと、僧正を見つめていた。うっかり、下ろし忘れた茶瓶のふたが、かたかたと、おどった。そっと、火鉢から下ろして、
「よろしい」慈円は、うなずいた。
それまで、恐いものの前に坐っているように硬くなっていた範宴は、
「ほんとですか」よろこんで、小さい掌を、ぱちっと叩いた。