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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

「ははは、余りにも、お考えが狭い。いわゆる、法を作るもの法に縛らるの喩え。そもそも、授戒のことは、必ずしも、年齢を標準にはせぬものじゃ。年さえ、加えれば、誰でも、大戒をゆるさるるとあっては、刻苦する者がなくなるであろう」

「詭弁っ」と、またうしろの法師頭の中から強くいう者があった。四王院は、それに激励されて、

「――あいや、おことばには候うが、十年二十年、この叡山に、苦行を積んでも、なおかつ、入壇はおろか、伝法のことすら受けぬものが、どれほどあるか」

「それは、その人の天稟がないか、あるいは、勉学が足らぬかの、ふたつでおざろう。――容のみ、相のみ、いかにも、荒らかに、苦行精進いたすようになっても、秋栗の皮ほども、心のはじけぬ者もある。生れながらの団栗であればぜひなき儀と思うよりほかはない」

「いや! 谷の者らが、専ら取り沙汰するところによると、座主の僧正には、少納言に対して、依怙を持たれると承る」

「それは、問わるるまでもなかろう」

「何ですと――では、明らかに、依怙贔屓だと仰せられるか。――何とおのおの、そう聞いては、もう議論のほかじゃないか。座主は範宴を盲愛していられるのだ。