轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
七
「若様。――寿童丸様」朱王房は、牢内の闇から、じっと、孤雲の面を見つめていたが、躍り上がるように立って、
「やっ。七郎ではないか」
「七郎ですっ。わ、若様、七郎でございまする」
「なつかしい」と、朱王房は、痩せた手を牢格子のあいだから差し伸べて、
「会いたかった……」
「七郎めも、どれほど、お行方を尋ねていたか知れませぬ」
「おお」と、朱王房は、思い出したように、牢格子へ手をかけて、
「いいところへ来てくれた。お前の腰の刀を貸せ」
「どうなさるのでございますか」
「知れたこと、この牢を破るのだ。斬り破るのだ。――人の来ないうちに、早く」
「でも……」と、孤雲はおろおろして、厳めしい高札に憚ったり、道の前後を見まわしたが、折ふし、人影も見えないので、彼も、勃然と、大事を犯す気持に駆られた。
脇差を抜いて、牢格子の藤蔓を切りはじめた。朱王房は、渾身の力で、それを、揺りうごかした。
四、五本の鎹が、ぱらぱらと落ちると、牢の柱が前に仆れた。
炎の中からでも躍りだすように、朱王房は外へ出て、青空へ、両手をふりあげた。
「しめた。もう俺の体は、俺の自由になったぞ。――うぬ、見ておれ」