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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
しかし、四、五年見ない慈円のすがたは、まだ初老というほどでもないが、かなり老けていた。
「僧正にも、お変りなく」範宴がいうと、
「されば、花鳥風月と仏の道におく身には、年齢はないからの」と若々しく慈円は微笑した。そして、
「このたびは、法隆寺へ修学のよしじゃが、あまり励めて、からだを、そこねるなよ」
「覚運僧都について、疑義を、御垂示うけたいと存じて参りました。からだは、このとおり健固にございますゆえ、どうぞ、御安心くださいまし」後ろの小縁にひかえていた性善坊が、そのとき、畏る畏るたずねた。
「ついては、この折に、御養父の範綱様や、また御舎弟の朝麿様にも、十年ぶりでお会いなされてはと、私からおすすめ申しあげて、実は、これへ参る先に、六条のお館をさがしました所が、まるで町の様子は変って、お行き先も知れません。で、――青蓮院でおうかがいいたせば分るであろうと、戻って参ったわけでございますが、範綱様にはその後、どこにお住まいでございましょうか」
「その儀なれば、心配はせぬがよい。かねて、約束したとおり、変りがあれば当所から知らせるし、知らせがないうちは、お変りのないものと思うていよ――とわしが申したとおりに」