轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
まだ、萩に早く、桔梗も咲かぬが、雨後の夜気は、仲秋のように冷々と感じる。
召使も、極めて少ないらしい。侍部屋へ通されて、吉次は、畏まっていたが、燭を運ぶのも、茶を煮てくるのも、みな侍従介だった。しかし、ここに入ってから感じたことは、外から見たようすとはちがって、なにか、藹々とした和やかな家庭味とでもいうものが、さすがに教養の高い藤原氏の住居らしく、身をくるんでくれることだった。あら削りな武人の家庭や、でなければ、浮浪の餓鬼の生活にしか接してない吉次には、
(やはり、ゆかしいものがある……)とそこらの調度や、どこかで薫らしている香木のかおりにも、そう思えた。
「失礼いたした」侍従介は、座に着いて、
「実は、ちと、お館におとり混みがござるので」
「ほ」吉次は、途中で耳にした噂を想いだして、
「どなたか、ご病人でも」
「なんの」と笑った。その侍従介の顔の明るさに、彼は、むしろ意外な気持がした。
「およろこびごとでござる。――この春、承安の三年弥生の朔日、珠のようなお子様がお生れ遊ばしたのでござる。それがため御当家は百年の春が回ったように、お館様も、おん奥の方も、御一門の若狭守様も、宗業様も、朝に夜に、お越しなされて、あのとおり、奥でのお団欒。