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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

女人は禁戒のはずではないか」

「というて、同じ人ではないか」

「ははは。ただ、けむたい気がするのじゃろ」

「そうけむたがらずに、呼ばれい、呼ばれい、わしも共に笛吹こう」

慈円が、笛をふこうというと、唐織の布を垂れた一方の几帳が揺れて、そのかげに、裳だけを重ね合って潜んでいた幾人もの女房たちが、こらえきれなくなったように、一人がくすりと洩らすと、それをはずみに、いちどに、

「ホ、ホ、ホ、ホ」

「ホホホ……」と笑いくずれ、さらに、々としていちだんたかく笑った十三、四歳かと見えるひとりの姫が、几帳の横から、

「ああ、おかしや」と、お腹を抑えながら、まだ笑いやまないで姿を見せた。

つづいて、侍女だの、乳人だのが、後から後からと、幾人もそこから出てきた。

四

「姫、ごあいさつをせぬか、叔父さまに――」

兼実がいうと、まだどっかこうあどけない姫は、笑ってばかりいて、

「後で」と、女房たちの後ろにかくれた。

慈円には姪にあたる姫であって、兼実にとっては、この世にまたとなき一人息女の玉日姫である。

「玉日――」慈円は呼んで、

「あいさつは、あずけておこうほどに、猿楽の真似を一つ見せい」