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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

四

「あッ、親分ですか」

「並木の蔭へでも引込んでいろ。それでなくとも、六条の町の火放けは、天城四郎のしわざだと、もう俺たちの噂が、火よりも迅く迫っている」

「なあに、たった今まで、そこの並木の後ろにかくれて、親分の見えるのを待っていたんですが、そのうちに誰かが、退屈がって、通りかかった坊主の牛車を止めて、六波羅役人の真似をし、南へ行こうとする奴を西へ行けと、遠廻りをさせたもんだから、みんなうれしがって、囃していたところなんで」

「馬鹿野郎、いたずら事ばかりしてよろこんでいやがる。同じ悪戯をするならば、でっかいことを考えろ、もっと途方もない慾を持て。どうせ悪党の生涯は、あの炎のように、派手で狂おしく風のまま、善業悪業のけじめなく、したい放題にこの世の物を慾の煙の中に攫って短く往生してしまうのだ。ケチなまねをしても一生、大慾大罪の塔を積んでも同じ一生――」骨柄といい弁舌といい、この男がこの一群の頭領であって、すなわち、京の人々が魔のごとく恐れているところの天城の野武士木賊四郎にちがいない。

四郎は部下たちへ、こうひと演舌してすぐに、

「いや、それどころじゃねえ」