轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
石を拾って風で飛ばないようにするまでの綿密な心づかいをこの盲人はして立ち去ろうとするのだった。
「お待ち下さい」範宴は呼びとめて訊ねた。
「おん身の峰阿弥という名は、琵琶を持ってからの仮の名でしょう。その以前、寺においでのころはなんと仰せられていたお方か、さしつかえなくば聞かせて欲しい」
「さよう……。恥の多い前身の名を申し上げるは面映ゆいが、実は、わしは、興福寺にいた教信沙弥でおざるよ」
「あ……教信」聞いたことがある、奈良ではかなり有名な人だ、学徳兼備の僧のようにいわれていたこともある、それが、奈良の白拍子との噂が立って放逐され、播州の加古川で渡し守をしているということが世間の笑い話になってから「加古川の教信沙弥」といえば堕落僧の代名詞のようになって落首や俗謡にまでうたわれたものだった。その教信沙弥がこの人なのか――範宴はそう聞くとこの盲人が前にいったことばももう一応考え直してみなければすまないような気持がしてきた。
だが峰阿弥のすがたは、白いものの飛ぶ朧な樹蔭をもうとぼとぼと彼方へ去っていた。そして、彼のいた床几のあとには、一葉の短冊が謎のように置き残してある。