轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「おや?」何を見つけたのであろうか、そのうちに、水草のなかへ手を突っこんで、
「オ、これは、いつぞや奥の御方が、鞍馬の遮那王様へ贈るといって、心をこめて、お書きあそばした写経じゃないかな。――吉次のやつ、かような所へ捨ておって、鞍馬へは持って行かなんだとみえる」水びたしになった塗筥や、巻をひろいあげた。そして、
「憎いやつめ」腹だたしげに、踏み折れている草の足痕を、睨めつけている。
そこへ、範綱、宗業の二人が、連れだって姿をみせた。昂奮した顔つきで、侍従介が写経のことを訴えると、
「ふむ……捨てて行ったか」二人はそれを見つめて、しばらく考えこんでいた。けれど、範綱も宗業も、べつだん不快な顔いろは出さなかった。捨て去る者には捨て去るものの心がまえがあるのであろう、浄土の幸は人に強うべきものではないし、また、この社会には、浄土をねがうよりも、すすんで地獄の炎をあびようとすら願う者もあるのである。――たとえば、文覚のように。
二人は、そう考えた。そして、遮那王の将来を心のうちで占った。中山堂の丘に、ちらと見えた野狐のような男の影は、ことによると、先ごろの夜、この日野を訪れた吉次であったかもしれぬと、それをも、同時に、覚っていた。