轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「――誰も追ってきませんね」
「よいあんばいに」
「ああ、ほっとしました」
「もうそこが」
「ええ、鹿ヶ谷です」顔を見あわせて、ほほ笑みを見あわせた。
彼女たちはこの山を、半年のあいだどんなにあこがれていたか知れない。この夏の専修念仏会の日からである。
「とうとう、来てしまいました。……けれど、これでほんとの人間に生き甦った気がします」
よくぞ思い切って脱れてきたと、自分で自分の勇気を宥わるのであった。しいんと、冬の夜は冴え返っている。眼を閉じて、捨ててきた過去の生活を考えると、よくも、そこに長々といたものかなと今さらに思うのであった。
あの嫉視と邪智の泥沼に。嘘と見栄だけにつつまれた臙脂地獄に。
「も少しです、ご庵室は」
「いそぎましょう」
「住蓮様は、おりましょうか」
鈴虫は、よく住蓮の名を口にする。――松虫はまた、若い安楽房のすがたが、なぜか忘れ得なかった。
彼女たちは女である、彼らはまた、若い男性なのだ。こうして、生命がけで、御所をすてて逃げてきたのは、ただ仏陀だけが魅力だったとは思われない。やはり、恋にちがいないのだ。鈴虫は住蓮を、松虫は安楽房をあの専修念仏会の夕べから忘れ得なくなっていることは否めないことであった。