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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

たいへんな結果になることは分りきっている。

「? ……」腕をこまぬいたまま、二人の若い沙門は、ただため息をつきあうだけであった。二人が、自分たちの生命がけな願いを容れてくれそうもないと見ると、松虫も鈴虫も、

「二度と、御所へは帰れぬ身です。もし、ここにも私たちはいることができないとすれば、死ぬほかはございませぬ」もう泣いていなかった。

彼女たちは、あらかじめ死を賭しているのである。死をうしろにしている強さが眸の底にあった。むしろ狼狽しているのは安楽房であり住蓮のほうであった。

「……弱ったのう」

「む……む……」果てしのない困惑が、いつまでも重苦しい吐息をつかせていたが、

「では、御所へは、どうあっても、お帰りなさらぬ覚悟ですか」

「帰りませぬ」

「しかし……」懇々と、諭しかけると、

「いいえ、私たちの願いの無謀なことは分っておりますが、こうなることを、よく知っても、こうせずにいられない気持で御所を出たのですから……」教養も常識もあるこの女性たちである、何を今になって、常識めいたことを受け容れよう。諭しかけた住蓮は、かえって自分が恥かしくなった。

「……安楽房。ちょっと、あちらへ行って、相談しよう」