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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

この教順を初め、三名の弟子は、元々、京都から従いてきた親鸞の古い弟子ではなかった。親鸞が北国へ来る途中からの随縁であった。それだけに、この人々のどこかに旧教の――聖道門の観念とにおいが強くこびりついていた。

「また、あの竹林の奥へ入って、ぽつねんと考え事に耽っているのじゃないか」と、人々は、すずしげな夏の月を見あげた。

月光の下には、深い篁が夜露に重くうなだれていた。

「そうかも知れぬ……」定相は、苦笑した。そして、

「救われぬやつだ」と、嘆くような眼をした。

「見てこようか」

「いや、よしたほうがよい。魔に憑かれているうちは、人のことばなど耳に入るものか。いずれそのうちに、師の房からお叱りがあるだろう」

その親鸞の室には、もう灯りが消えていた。三名もまた、あしたの炎天の托鉢を考えて、戸を閉めて、眠りについた。

二

石念はおそくなってからこっそり帰ってきた。もう同房の者が皆、眠りについてからだった。

(……どこへ行っておったのか?)定相は気がついて、うす眼をあけて彼が臥床へもぐり込むのを見ていたが、わざと言葉はかけなかった。

「……ああ」それは石念のつぶやきだった。