轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

名残りを告げて行くがよい」

誰か? ――と頼朝は、下屋へ行ってみた。するとそこには三名の顔を知った者がひかえていた。

一人は叔父の祐範。

もう一名は纐纈源吾盛安と名乗る源家の牢人。

それと、比企の局。

――そう三人がいた。

局は、頼朝の乳母で二条院にいた頃は丹後の内侍といわれていた女性である。去年三月、母とも死に別れてからは、いっそう頼朝には恋しい乳母だった。

「…………」

頼朝は、つき上げる感情を抑えるように、棒立ちに突っ立っていた。比企の局は、その姿もよく仰ぎ得ないで、泣いてばかりいたが、

「和子様。お髪を上げに参りました。どうか、お名残りに、お髪を上げさせて下さいませ……」

と、云った。

頼朝が、だまって後ろを向いて坐ると、局は涙ながら彼の髪を梳いて結い直した。そして耳へ、

「きょうが最後のお別れではございませぬぞ。東国へお下り遊ばした後も、また、何かと乳母がお側へまいりますれば……」

と、ささやいた。

纐纈源吾盛安もすり寄って、早口に、

「和子さま。和子様。――八幡大菩薩のお計らいで、ふしぎに助からせ給うたお生命ですぞ。いかなる者に強いられようと、そのお髪を剃してはなりませぬ。