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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
獲物の鳥と矢を拾って、盛綱が去ろうとした時である。――読経の声がやんだ。――そしてぬッとそこの新木の縁ばたへ出て来た大男が、一喝した。
「誰だっ。待て」
盛綱は、振向いた。――坊主だな、と思っただけである。
「なんだ」
すると、大法師は、
「墻の内へ無断で這入りこんでおきながら、何だという挨拶があるかっ」
「此屋には、墻があったのか。裏山から降りて来たので知らなんだ」
「なお、許せぬ。小冠者、ひとの庭へ矢を射込んで、詫びもせいで、立去る気か」
「悪かった」
「――では済まん」
「然らば、どうせいと云うのか」
「両手をついて謝れ」
傲然と、縁の上からいう。
隆々たる筋肉をもち、下腹も肥えているので、わざと反っているくらいに見える。硬そうな無性髯と、僧にしては闘争的な眼光を備えている。――そういう眼に出合っては、元来が、謝りたくても謝れない性分をもつ坂東骨の盛綱は、
「これ以上は謝らぬ。手をついて謝らなかったら如何する」
と、冷笑した。
法師は、毛の生えた鉄拳を、ぬっと突出して、
「小冠者、これが喰らいたいのか」
と、云った。
三
「何っ」
盛綱が、太刀へ手をかけて寄ると、大法師は、