轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
痛さに、われを忘れて、政子は悲鳴をあげたが、同時に、その侍の口からも異様な呻きが流れた。その侍は、何者かに、刃で脾腹を刺し貫かれていたのである。
「政子さま。私の背に」
片手に、短刀をひっさげた覆面の男が、彼女に背を向けた。土肥次郎実平であった。
釜殿の出火は、元より実平の仲間が放けた火であろう。政子を負って、彼が土塀のほうへ駈けてゆくと、そこの木陰から、他の人影が幾つもつづいて行った。
ほとんどが、火に気をとられて、何を顧みる余裕も持たなかったので、若人輩は、難なく花嫁を奪って、土塀の外の濠をも渉ってしまった。
「厩から馬を奪って来た。実平実平、そして姫をこれへお乗せしろ」
仁田四郎の声である。手柄手柄と、藤九郎盛長が賞める、実平は、姫をかかえて跳び乗った。
駒につづいて、面々も駈け出した。そして、山へかかるとまた、実平は政子を負い直して、半島の背ぼねをなしている伊豆山の裏道の嶮を辷りながら攀じて行った。
恋の旗
一
治承二年になった。
年は変っても、やがて、伊豆の春とはなっても、花嫁の失踪に端を発した去年からの紛争は、この国の空に、険悪な雲ゆきを持越したままであった。