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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

「馬上は不利」

と、云い合せたように駒を捨てて戦った。

源氏方一人に、平家方は十人以上を以て当り得る優位にあったが、その優位がものいうまでには、かなりな時を費やした。死者や負傷の数も敵の十倍以上を出し、このままで斬り立てられると、ついには自身が危ういぞ――と切羽つまって来てから初めて、

「くそっ、多寡の知れた敵に。ふがいないぞ、味方の者。死ねや、退くなっ」

と、俄然、平家方も、咆哮を揚げ直して、死にもの狂いになって来た。

組む、組んだまま、水へ転げ落ちる。

首を掻いて、

「討ったッ。――敵の」

と、躍りあがって、血のしたたる物を差しあげながら、何か功名をさけんでいると、

「こいつッ」

と、その後ろから、躍りかかって来た太刀の下に、首を持ったまま、首を掻かれかけている武者もある。

「あっ、殿ッ。――滅相もないっ。あなた様は」

乱軍の中で、名もない敵と、斬りむすんでいる頼朝を見つけて、天野遠景は、腹が立った。

腹立ちまぎれに、

「木っ葉どもめ」

と、頼朝へ挑んでいる敵の、四、五人を、遠景は大長刀で滅茶苦茶に叩き伏せ、薙ぎとばして、

「おッ、お逃げにならなければいけませんッ」