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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

――その骨柄や眼ざしが、一くせある者と見えたので、番の武者たちは、気押されて、

「狼藉いたすかっ」

と、威圧した。

「いや、狼藉はしません!」

騒然と、ふた言三言、それから双方で烈しく云い争っていた。――折ふし、門のうちを通りかけた土肥次郎実平は、何事かと、外へ出て来てみると、この体なので、

「鎮れ。鎮らぬか」

と、引わけて、さて、一方に毅然として佇んでいる小がらな冠者に眼をとめた。

「おん身は、誰か」

と、彼も不審そうな顔して、その前へ寄った。

三

土肥次郎実平は背が高い。

小づくりな義経は、上から見下ろされた姿であった。

「…………」

義経は、答える代りに、眼を以て、自分より高いところに在る彼の眼を見つめていた。

実平は、もう一遍、同じことを訊ねた。

「鎌倉殿へお目通りしたいという事だが、あなたは一体、どこの何者だ」

すると、義経は、

「そういうお前は?」

と、訊ね返した。

番の武者には至極ていねいで腰低かったが、実平に対してから彼の態度はまるでちがっていた。

たたみかけて、

「兄の家臣であろうが、姓は何という? 人の氏素姓を糺しながらわが名も告げないのは、礼儀に欠けているではないか」