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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

「何たる不覚を」

と今さら、自分たちの不用意に気づいたり、天をうらむが如く呟いてみたが、何もかも後のまつりである。

そこで、この上はと、畏れ多くも建礼門院が手に、まだお幼い主上を抱きまいらせて、ご同輿の出御を仰ぎ、内大臣宗盛父子や平大納言時忠など、重なる人々は衣冠、そのほか、武臣はもとより、公卿殿上人から端仕えの人々まで、すべて、弓矢甲冑を帯し、きょう卯の刻、七条朱雀を西へお供申して行ったのであった。

その後は。

平家は、平家自身の栄華の寝床を各※(二の字点、1-2-22)の手で焼きはらって、立ち退くだけとなっていた。

四

――こういえば平家の退却は、予定のもとに、秩序整然と行われたようにもあるが、それは御幸のあった時刻の前後だけでいよいよ残る一門が、各※(二の字点、1-2-22)の第宅に火を放って、

「それ、お後をしたえ」

と、わが身わが身の始末と、取り残されまいとする先を争う最後になると、

「これが、きのうまで、わが世の春を誇っていた貴顕か」

「これが、きのうまでの都か」

と、怪しまれるばかり、浅ましい喧騒と混雑が、火焔と煙のちまたに描きだされた。

「落ちゆく先とて定かでない。