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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

そしてその奉持する宗教では、飽くまで禁慾的な――難行苦行主義な――自力聖道の道を極端にまでやかましくいっていたが、高綱が見たところでは、それは形の上にだけ行われていて、僧たちの個人生活には、それと矛盾している無数の醜が隠されていた。

隠されて行われているために、それはよけいに人間の醜を感じさせるものになる。――のみならず高綱自身も、その外面的な禁慾主義と難行主義に、迷いと疲れが重るばかりで、真の出家のたましいはここでは得られそうにもない気がした。

「だめだ」彼は山を見まわした。

「ここも糞中の外ではなかった。――ああどこにそれがあるのか?」ふと、彼は西仏の居どころを思い出した。

北越――小丸山の草庵。

そこには、高野のような金堂宝塔の美はないが、何か慕わしいものがあるように思われた。その慕わしいものの心根をさぐってみると、高綱もまたいつとはなく世上で耳にしていたところの親鸞という名であった。

「そうだ」彼は高野を下りた。――何の惜し気もなく七堂伽藍の善美や九百余坊の繁昌仏国をすてて、北へ北へ、たましいの住み家を求めて、孤影を旅の風にまかせて歩いた。

五

裏日本の風にはもう冬の訪れが肌を刺してくる。