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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

ましょうか、格天井の組みとか、欄間細工などの仕事になると、平次郎でなければほかの大工にはできないというので、仲間の者も、つい、憎みながらそれには一目おいておりますので」

「だまれ」国時は、叱咤して、

「たとえ、建立の仕事の上で、どのように必要な職人であろうと、畏れ多くも、勅額を奉じ、衆生のたましいの庭ともなろうこの浄地に、しかも、まだ普請中から、血をもって汚すようなさような無頼の徒を、なぜ、使用しているか。ゆるしておるか。――他の職人どもへの見せしめにも相成らん、きっと、厳罰を申しつけい」

「恐れいりました」

「すぐにせい。――そうじゃ、この地域の内では刑罰はならん、あちらの草原へ曳き出して、首を刎ねい」

「はっ」

「猶予するなっ」

「かしこまりました」城主の命である、奉行の藤木権之助も、大工棟梁の大膳も、色を失って、蒼惶と立ちかけた。すると、

「あ……お待ちなされ」静かな親鸞のことばであった。

人々のあいだへ歩み寄って、

「もいちど、今のお話を、聞かせてもらいたいが――」と、その辺の材木の端へ腰かけた。

五

大膳と権之助のふたりから、平次郎の常々の行状やきょうの出来事を、改めて、もいちど審さに話すと、親鸞はいちいちうなずいて聞いていたが、