轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「空虚な……とは、今の御主人さまや、俺たちの心だ」
「ひっそりとして、蝶も舞わぬ。堂上堂下、悲しみに沈んでいるこの春の御諒闇に、虫けらまでも、さびしさが、わかるとみえます」
「夜だ、どうしても、昼間とは思えない――」介は、道を曲がる。
その道もまた、しいんと、冷やかで、人影がなかった。
明けて――十八公麿が九歳になった春の三月中旬のことだった。
牛車のうちには、墨のごとく、沈んだ人影がみえる。養父範綱の膝にだかれた十八公麿であった。母をうしなってからの十八公麿はさらにちがってきた。面ざしすらにわかに吉光の前に似かようてきたかに見えて端麗を加えたのも変り方の一つであったし、さらに、範綱さえ、介さえ、ときどき、驚かされることは、彼の眸であった。黒く、飽くまで黒く、そして湖のごとく澄んでいる眼であった。
星を見――雲を見――風を仰ぎ――そして地上の人間が描く修羅遊戯の種々な事象に、じっと、いつも、不審をだいて考えこんでいるような彼の双眸であった。
久しく、書を教えていた叔父の宗業は、はやくも、筆を投げて、
「もう十八公麿には、あまり教えぬほうがいい」と、いったほどである。