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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

「ふーム」と、妙光房は、うなって、

「さては、いよいよ、事実なのか。座主には、宗祖の大法を枉げても我意と私情を押し通そうというお心とみえる。――だが、山には山の則がある、よしや、座主はゆるされても、則がゆるさぬ、弥陀如来がゆるし給うまい」と、妙光房は、口から唾をとばして、罵った。そして、性善坊へ、

「やい、新発意」

「はあ」

「はあじゃない。中堂の宿房へ帰ったら、貴様の師の少納言へ、きっと、申しつたえておけ」

「…………」

「まだ人なみの骨がらも持たぬ乳臭児の分際で、宗規を紊し、烏滸がましい授戒など受けると、この叡山の中にただはおかぬぞと」朱王房も、彼のことばの後について、

「――授戒の場を去らせず、童の首をひきぬいて、千年槙の木の股に梟首し、鴉に眼だまをほじらせるぞと告げるがいい」と、脅しつけて、肩をそびやかして、立ち去った。

(うぬ!)と性善坊は、後に立って、歯がみをした。追いかけて行って、谷間へ、一投げにしてやりたいような激憤が、体を熱くさせたが、中堂から鳴る鐘の音を聞いて、

「ああ、遅くなった」と、暮れかかる道をいそいだ。

「修行だ、何事も修行だ。こんなことに、心をうごかされてどうするか。