轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
慈円は、壁ぎわにいる人々の顔までを、ずっと見わたして、
「誰か、仰せ出られる人はないのか」
「…………」いつまでも、座はしんとしていた。二人の長老も、実は、そこまで、争う本心はなかったとみえて、尻押しの学僧たちが、だまってしまうと、立場を失ったように、もじもじしていた。
「そも、おのおのは、入壇とか、授戒とかいうことを、俗人が、位階や出世の階梯でものぼるように、考えていられるのではないか、とんでもない間違いでおざる」慈円は、そこでもう、常の温柔な面と語気にかえっていた。濃い眉毛のうえに、ぼつんと、黒豆ぐらいな黒子がある。この容貌に、二位の冠を授けたら、どんなに、端麗であろうといつも人は見つつ想像することであった。
「いうまでもなく、入壇と申す儀は菩薩心への、達成でなければならぬ。生きながらすでに菩薩たる心にいたれる人に、仰讃の式を行う、それが、授戒入壇の大会である。なんで、いたずらに、その域へ達せぬものに、この大会大戒の儀をゆるそうか」
「…………」静かではあるが、慈円の声は、たとえば檜の木蔭を深々と行く水のひびきのように、耳に寒かった。
「――また、菩薩心に達したものはかの龍女のごとく、八歳にして、もう壇に入ることをゆるされた。