轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「そんな義理がたいことには及ばないさ。奈良の茶屋町で、一晩遊べば、あれくらいな金はすぐにけし飛んでしまう。お坊さんへ、喜捨いたしますよ。はははは」
「それでは余り恐れいります。失礼ですが、ご尊名は」
「名まえかい。――名をいうほどな人間でもないが、これでも、先祖は伊豆の一族。今では浪人をしているので、生国の名をとって、天城四郎とよんでいる田舎武士だよ」
「では、旅先のお体でございますか。さすればなおのこと、路銀のうちを私どもの難儀のためにお割きくだされては、ご不自由でございましょうに」
「なんの、長者ほどはないが、路銀ぐらいに、不自由はしない。くれぐれも、心配しなさるな。そう案じてくれては、せっかくのこっちの好意がかえって無になる。……ああ思わず邪魔をした。どれ、自分の塒に入ろうか」そういうと、男は隣の間に入って、ふたたび顔を見せもしない。
やがて、黄昏れの寒鴉の声を聞きながら、範宴も、法隆寺へ帰って行った。そして、山門の外から本堂の御扉を拝して、弟のために、祈念をこらした。
その夜――凍りつく筆毛を走らせて、彼は、粟田口の草庵にいる養父の範綱――今ではその俗名を捨てて観真とよぶ養父へ宛てて、書くにも辛い手紙を書き、あくる朝、駅使にたのんで京へ出しておいた。