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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

それは性善坊と共に、先年、都に帰った弟の朝麿なのである。

常々、心がかりになっていたことでもあるし、この青蓮院へついてもまっ先にその後の消息をたずねたいと思っていたのでもあるが、まさか、髪を剃ろして、ここにいるとは思わなかったし、師の慈円も、そんなことは少しも話に出さなかったので、彼は驚きの眼をみはったまま、

「おお……」とはいいながらも、しばらく、弟の変った姿に茫然としていた。

朝麿はまた、兄の痩せ尖った顔に、眼を曇らせながら、

「――ここでお目にかかるも面目ない気がいたしますが、ご覧のとおり、ただ今では、僧正のお得度をうけて、名も、尋有と改めておりまする。……どうか、その後のことは、ご安心くださいますように」と、さしうつむいていった。

「そうか」範宴は、大きな息をついて、うなずいた。それで何か弟の安住が決まったように心がやすらぐと共に、もういっそう深刻な弟の気もちを察しているのでもあった。

「お養父君も、ご得心ですか?」

「わたくしのすべての罪をおゆるしくださいまして、今では、兄上と共に、仏の一弟子として、修行いたしておりまする」

「それはよかった……さだめしお養父君もご安心なされたであろう。