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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

あわれや、平家の末路は見えたっ」

「走れ」役人は、牛飼へいって、牛を走らせた。

軌が、すさまじい地ひびきを立て、そして、漠々と、黄いろい土ぼこりを、群衆の上へ舞わせた。

「――この世に、無限の栄華はない。いわんや、平家においてをや。民よ、大衆よ、気を落さずに、世の変るのを待てっ!」

「わあっ」民衆は、どよめいて、

「変れっ、改革まれ」発狂したようにさけんだ。

びし、びし、と鞭に趁われて、檻車を曳いてゆくまだらの牛は、尾をふって、狂奔してゆく。

文覚は、遠ざかる人々へ、

「おさらば」群衆も、眼に涙をためて、

「おさらば――」埃で、陽が昏くなった。

「ああ」と、力なく、草いきれのような嘆息が、そこやここに聞える。そして、人々が見聞したうわさを持って町の方へながれて行くと、その間を、例の六波羅童が、しきりと、小賢しい眼をして、罪を嗅いであるく。

「どこへ、お出でたのか」

「こっちでもないらしい」三人の寺侍だった。

いちど、鳥居大路へ、群衆と一緒に、もどって行ったが、また引っかえしてきて、

「これだから困る」

「あの御曹子には、まったく、手を焼いてしまう。外出は、禁物だ」誰をさがしているのか、きょろきょろと、走ってきて、