轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「範宴、また来るぞ」鏃のような鋭い彼の眸に対して、範宴の向けた眼ざしは春の星のように笑っていた。
「オオ、また参るがよい」
「ふふん……負惜しみのつよい男だ。人もあろうに、俺のような人間に、女犯の証拠をにぎられたのが汝の災難。一生末生、つきまとって金をせびるものと観念しておけよ」
「ふかいご縁じゃ。いつかはこの浅からぬ宿縁に、法の華が咲くであろうよ」
「まだ囈言を吐いていやがる。おれの悪を偽面とぬかしたが、汝も、聖めかしたその偽面を、ぬぎ捨てて、凡下は凡下なりに世を送ったほうが、ずんと気が楽だろうぜ。はははは、坊主に説教は逆さまだが、俺の経文は生きた人間へのあらたかな極楽の近道なのだ。……どれ、だいぶ寒い思いをしたから、今夜は八瀬の傾城に会ってその極楽の衾に、迦陵頻伽の声でも聞こう。おさらば」
盗賊の習性として、現場を退く時の身ごなしは眼にもとまらないほど敏捷であった。廻廊へ出たと思うと、四郎の影も、手下どもの影も、谷間を風に捲かれて落ちる枯葉のように、たちまち、その行方を掻消してしまう。
さっきから歯の根もあわず、縁の柱の蔭にすくんでいた尋有は、悪夢をみているような眼でそれを見送っていた。