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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

まったく、自業自得と申すほかはありません」

夜来一椀の水も喉へとおしていない彼の声は、乾びていて、聞きとれないくらいに低い。しかしその音声のうちには烈々と燃ゆる生命の火が感じられ、そして、みずからを笑うがごとく、嘲るがごとく、またなおこのまま斃れてしまうことを無念とするような青年らしい覇気と涙がその面をおおっていた。

「お察しする」と、法印は呻くようにいって、同情に満ちた眼で、範宴の痩せて尖った肩に手をのせていった。

「立ちどまっていては、人目につく。歩きながら話しましょう」

八

肩を並べて、二人は歩みだした。四条の橋を東へ渡りかけて、

「法印、あなたは、西の方へお渡りのところではありませんか。こう行っては、後へ戻ることになりましょう」範宴が、ためらうと、安居院の聖覚は、首を振って、

「何、かまいません。友が生涯の彼岸に迷っていることを思えば、一日の道をもどるくらい、何のことでもありません」そういいつつ、歩む足も言葉もつづけて、

「今、あなたの真摯な述懐を聞く途端に、私の頭へ閃めいたものがあります。それは、きっとあなたに何らかの光明を与えると思う」

「は、……何ですか」