轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

心蓮は、恐かった。

しかし――不愍さに捨てては逃げられなかった。

そこの一つの樹の根に、荒縄で縛りつけられている大きな黒犬は喉から断られてしまいそうに首を長く伸ばして、ほとんど、飛び出しそうな眼を、心蓮の影へ向けているのだ、訴えているのだ、何とも、言語のある人間には表情のできないような表情を必死に示して――

「どうしたのだ、百姓の子でも、咬み殺したのか、おまえは……」心蓮は、恐々、寄って行った、黒犬の体は、狂いに狂っていたためであろう、自分の血でよごれていた。

それを摺りつけて、犬は、心蓮にからみついてくる――。眼やにをもって、そして、血ばしった眼に、涙のようなものをもって。

「待て。――これっ、そうからんでは、解いてやることもできないではないか。離せ、お離し……」やっと、振りもいで、木の根の縄を解いてやったのである。すると犬は躍ってよろこんだ、狂喜というのはこういう態であろうと心蓮は眺めていた。

突然、黒犬は、征矢みたいに駈け出した。

「あっ……」と、呆れてながめている間に、もうその影は、灌木の下を突き切って、街道へ出たかと思うと、いっさんに、彼方の丘へ向って飛んでいた。