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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

眼のいろを変えて、自分を取り囲む人々へ話すのであった。

「慈円僧正が、とうとう天台座主を退かれて、叡山から降りてしまわれたという噂だ」

「え、座主をおやめなされたって?」

「罷めたというよりは、いたたまれなくなって、ついに、自決なすったというほうがあたっているだろう。――何せい、慈円僧正がいなくなっては、いよいよ、これから吉水と叡山とは、うるさいことになろうぞ」

「上人のところへは、まだ、僧正からなんの御消息もないのかしら」

「あるまい、不意なことだ。――そして叡山では、またぞろ、今夜も何度目かの山門の僉議をひらいて、本格的に、吾々の念仏門へ対して、闘争の備えを立てなおし、一方には、政治問題にして、念仏停止の請願を院へ向ってする企てだと聞いた」

「ふーム、それは容易ならぬことだ」

「吾々も、じっとばかりしていたのでは、ついには、彼らのために、せっかくここまで築いてきた念仏易行の門を、めちゃめちゃにされてしまうかも知れぬ」

「上人は、どうお考えになっているのだろうか」

「まだ、何もご存じあるまいと思う。――ひとつ吾々が打ち連れて行って、お気持をうかがってみようではないか」