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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

……ところが近ごろは、この四郎も、見たとおり尾羽打ち枯らしての不景気だ。何と弁円、知っているなら、松虫と鈴虫のありかでもおれに教えてくれねえか」

「はははは、そいつあ、あべこべだ。おれのほうこそ、訊きたいところだ」

三

「弁円、山伏のおめえにも、やはり慾はあるんだな」

「ばかをいえ」

「でも、松虫と鈴虫のありかを知りたがっているのは、いわずとも知れている、恩賞の金にありつこうというのだろう」天城四郎は、そういうことを愉快がる男だった。自分の悪魔主義を肯定してよろこぶのである。

「ちがう」弁円は、首を振って、

「おれは、知行だの金だの、そんな物は要らん」

「じゃあ何のために――」

「善信の奴に、痛い目を見せてやるためだ、復讐の一つとなるためだ」

「はてね?」解せない顔をして、四郎は、きのうあたり剃ったばかりらしい青い頬から腮をなでた。

「はてなあ……」

「わからぬか」

「分らぬよ」

「おれの想像だが……しかしこの想像は外れていないつもりだ。――松虫と鈴虫のふたりは、きっと、吉水の法然上人の所にかくれていると思うのだ」

「えっ、吉水に」

「さればよ」

「どうして」

「――いや、確証はない。