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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

……この兄の分も共々に尽してたもるようにの」

「きっと、励みまする。そして今のおことば忘れませぬ。……けれど、遠流の日が、十六日ということでは、兄上には、もう慈円僧正にお会いあそばす折も」

「むずかしかろうの。……吉水の上人にも、一目お会い申しとうて、月輪の老公におねがいしてあるが、どうやら官のおゆるしはならぬらしい。……しかし弟、この善信は遠国へ流さるるとても、決して、悲しんでたもるまい。念仏弘世のため、衆生との結縁のため、御仏の告命によって、わしは立つのだ。教化の旅立ちと思うてよい」

「お心のうち、そうあろうかと、尋有も考えておりまする」

「重ねていうが、お汝はまだ若年、都にあっても、くれぐれ勉強してあれよ」

「はい、その儀は、お案じ下さいますな。いささか平常の修行を認められまして、私も、近いうちには、叡山の東谷善法院へ下されて一院を住持する身となりました」

「ほう……叡山の東谷へ移られるか。奇しき縁じゃ。兄は、叡山の大衆より、法魔仏敵のそしりをうけて追われてゆくに」

「善信の血縁の者とあって、反対もあったようにござりますが、師の慈円様のお計らいで」

「よいことだ、そういう中にやって、そちの人間を作ってやろうという師の房のお心にちがいない」